もはや物陰に隠れていても意味がない。

仕方ないのでゆっくり女の前に出る。


「いやぁ、すいません。別に盗み見ようとしたわけではないのですが、少々異臭がしたもので」

微笑みながらそう言ったものの女は今にも襲い掛かりそうな雰囲気を崩さなかった。



(綺麗だな)




場違いにもそんなことを思ってしまった。

「じゃあ、見物料としてこのことは見過ごしてや」


「そうですねぇ、今日は貴女の言う通りにしましょう」

「…」

交渉成立。女はなにも言わず立ち去ろうと背を向けた。