「どうぞこちらへ」


すでに隊士たちの稽古は終わったのか、道場には永倉と総司、壬生浪士組局長・近藤の姿しかなかった。

ただでさえ広いと感じていた道場が今はその倍くらい広く感じる。


「こっちに防具と竹刀あるから、好きなの選びな」

ついさっきまで隊士たちに稽古をつけていた永倉が汗を拭いながら言った。


「防具なんていらん。うちは自己流の喧嘩剣術なんでね。あんたこそ、早く防具つけや」

「奇遇ですね〜!私も喧嘩剣術と似たようなものなんですよ。貴女が防具をつけないなら私もつけません」


「…そのお綺麗な顔に傷がついてしまうで?」

「負けませんから大丈夫です」


負けず嫌いの最高峰が揃ってしまった。

二人は道場の中央で向かい合いながら不敵な笑みを浮かべていた。