「あっはは!やっぱり赤城さんはかっこいいや!!」
「なんやいきなり?!」
「くくっ!何でもないです」
山野の顔には一点の曇りもなく、至極晴れ晴れとした表情を浮かべていた。
「赤城さん!」
「うん?」
店に来たときの山野の硬くなった表情はいつの間にかやんわりと綻んでいて、女である楓から見ても綺麗と思うほどであった。
「お願いなんですけど、これから下の名前で呼んでもいいですか?」
「あんたの好きに呼んだらええ。八十八くん」
「はははッ!!ありがとうございます!」
山野は楓に対して何の未練もなかった。
全て自分なりに納得した上で、自分が今まで抱いていた恋心を本人には告げない道を選んだのだ。
(仲間とか友達とかそう思ってもらえたらそれで十分だぁ)
「はい!お待ちどうさま!!」
丁度いい頃にお滝が葛餅を持って現れた。
「ここの葛餅はうまいんよ」
「そうなんですか?!じゃあ、また連れて来てください!」
「…そういうことは自分で味確かめてから言わなあかんよ」
「えへへ。すみません!」
「…なんか、楽しそうじゃね?」
「あれ…うまくいったのか?」
「お待ちどう様でした〜」
遠くで盛り上がる三人を羨ましそうに見つめる永倉・原田の席にお絹が団子を運んできた。
「…男二人で団子」
「すっげー寂しいんですけど…」
ムサイ男二人はそれっきり無言で団子を平らげ、店から出て行った。

