「どうって…そうやなぁ。平べったく言うたら“同類”かなぁ…」
特に感情を露にするわけでもなく、楓は淡々と答えた。
「同類…ですか?」
楓の言葉が意味するところを山野は理解できない。少しでも理解しようと更に追求してみる。
「認めたくないけど、総司とうちは性格とか性別云々の前の段階、人間の根本的な部分が似てると思うねん」
「…何を…おっしゃっているのですか?」
山野には楓の姿が次第に遠ざかっていくように思えた。
必死で楓を捕まえようとするが、あと一歩、もう半歩足らない。
「自分でもわからん。これはうちの意識じゃなく、うちの核(なか)がそう言っとんのや」
“おかしな話やろ?”最後に付け足しの言葉を発したときの楓を見た山野は、はっとした。
――自分では彼女に追いつけないんだ…
楓の眼はまるで僕を写していない。それどころか人間自体を写していないのだ。
どこか遥か遠い場所、僕には一生辿り着けないような場所を見ているんだ。
そう悟ったとき、山野は楓を追うことを辞めた。

