幕末異聞



「…人を斬るのを何とも思わない自分が怖いって…。
あと、よくわかんなかったんだけど、“がき”が棲んでるとも言ってた」


「“餓鬼”…か。あいつらしいわ」



(餓鬼が棲み憑いてんのはお前だけやないで…)



楓は出されたお茶を飲み干し、腰を上げた。

「ごちそーさん。また来るわ」

「へ?また??」

楓の意外な一言に藤堂は情けない声を出した。
楓はそんな藤堂に微かに笑顔を見せ、部屋から出て行った。



「…あいつ少し変わった?」


自分の対面に置かれた空の湯のみに向かって話しかける藤堂だが、当然答えは返ってこなかった。