「…恋人…ですか?」


山野は若干の苦笑いをする。

「そうだよ!早く言ってみろよ!!」

これには流石に永倉も興味があるらしく、原田の後ろで期待の目線を山野に送る。
齋藤はというと、全く興味がないようで、さっさと掃除を終わらせ、道場から去ってしまった。


「あ…はは、残念ながらいないんですよ」

恥ずかしそうに後頭部を掻きながら小さな声で答える山野。
しかし、原田の詮索はこれだけでは済まない。



「じゃあ想い人はいねぇのかよ?!」

「えッ?!!」

「おお?これは好反応ですぜ左之さんよぉ!」

永倉は片方の口角を上げてにやけながら山野をおちょくる。永倉がおちょくりたくなるのも無理は無かった。この時の山野の顔は、頭から湯気が出そうなほど真っ赤になっていたのだ。


「そ…そんな人いません!!からかわないで下さいよ永倉先生!はははッ」

小動物のような人懐っこい笑顔でこの場面を何とか凌ごうと努力する山野。


((う〜ん。こりゃ確かに可愛いわ))


永倉と原田は間近で山野の笑顔を見て、彼が隊士たちに慕われるわけがわかった。

「がははッ!そんな隠すなよ〜!!想い人がいるってのはいいことじゃねーか!」

原田は山野の華奢な肩が折れてしまうのではないのかと心配になるくらい強く叩く。

「誰なのか教えろよ〜!なんなら俺らが協力してやるよ?」

永倉も原田が叩いた逆側の肩を肘で小突いた。


「えぇ……。誰にも言わないでくださいよぉ?」

「「言わない言わない〜!」」

上目遣いで懇願する山野に二人は期待の声を揃る。


「じゃあ……」


山野は色白の整った顔を原田と永倉に近づけた。




「―――」