「…ねぇ平助」

「うん?」



「人を斬るのが怖くなった事って…ありますか?」



開け放たれた障子から北風が入り、二人の髪を揺らす。
藤堂は沖田の質問に対してしばらく黙っていた。


「あるよ。たまにね…」

“恥ずかしいから誰にも言わないでね”と付け加えて藤堂ははにかんだ笑顔を見せた。

「そういう総司は?」

沖田は持っていた竹の刀を手作りの鞘に収め、畳の上にそっと置いた。すぅっと冬の冷たい空気を肺に入れ、藤堂の目を見る。



「私は…人を斬るのを怖いと思ったことはありません。
でも、私はそんな自分が怖いんです」


笑顔の消えた沖田の顔はまるで別人のように思えた。