「そんな事はどうでもいいッ!!おい赤城、お前が俺の頭を叩いた物はなんだ?」
「なんやろ。勘定方から借りて来た本」
「なんて書いてある?」
楓は自分が手に持っている緑の本の表紙を見た。
「隊費勘定録」
書いてある通りを音読する楓。藤堂は両手で耳を塞いでいる。
「それ…隊費の使い道を記録した重要なものだって知ってるか?」
「知らん」
――プッツン…
その時、藤堂には土方の血管が切れる音がはっきりと聞こえた。
思わず目をぎゅっと瞑る。
「こぉぉのぉぉ馬鹿野郎――ッ!!テメェのその頭は飾りか?!!」
――ゴスッ!!
何とも現し難い鈍い音がした。
「ダッッ!!」
楓は一瞬身体が地面にめり込んだかと思った。
土方の鉄拳を脳天に食らったのだ。
「何すんねん?!!頭カチ割れたらどうしてくれんのや!!!」
自然と楓の眼からは涙が溢れている。頭に受けた衝撃の強さを物語っていた。
「うっせーー!そんな無い頭カチ割ったって何もでてこねーよ!!!
ちょうどいい、オメーには貸しがあるんだ。ちょっと顔貸せ!!」
「断る!!怪しいおっちゃんには付いていかん主義なん…っておい!!」
楓の言葉を全く無視して土方は楓の襟を掴み、強制的にズルズルと廊下を引っ張っていった。
長い廊下からは楓の土方を罵倒する声が響いていた。
「はあー……」
あっという間の出来事に藤堂は口を開けたまま呆然と立ち尽くしていた。

