幕末異聞



土方の部屋から出た沖田は、汚れた羽織を手に井戸へ向かった。
血は時間が経つと落ちなくなってしまうので仕方なく冷たい水で濯ぐ。
水は手が凍ってしまいそうなほど冷たく、沖田は歯を食いしばる。




(冷たいって事は生きてるってことか)



――バシャッバシャ…




(生きてるってことはこれから死ぬってことか)




――ザブザブ…




(死ぬてどんな感じなんだろう)




――ザバァァ…




(私が死んだら誰か泣いてくれるのかな)




――チャプッ…




(私が斬ってきた人たちも誰かが泣いてくれたのかな)



――ポタ…ポタ…




(私が…泣かせてるのか)





「全然…落ちないや…」




盥の中の水は真っ赤に染まっていたが、絞った羽織には血液が染み込んで落ちなかった。