――ザッ!ドサ…
「…」
「どうしたんだい沖田くん、そんなにぼんやりしちゃって」
「あ…松原さん。いやぁ、私ぼんやりしてました?」
「ああ。少し疲れているんじゃないか?」
「ははは、疲れているのはみんな一緒でしょう」
「がはは!確かにそうだ!よし、では帰ってゆっくり身体を休めるとしよう!」
烏丸五条を少し外れた通りで沖田と四番隊を率いる松原忠司は血塗れの刀と返り血を浴びた羽織を身に纏い談笑していた。
笑っている二人の足元には二体の死体が転がっているという不気味な光景。
どうしてこのような状況になったかというと、沖田の一番隊と松原の四番隊が市中を見回っている最中、この烏丸五条付近で浪人二人に襲われ、交戦した結果、このようになったのだ。
「あとは監察の人たちにお任せしましょう」
「そうですな。しかし、本当に大丈夫かい?」
「何がです?」
松原は見事な坊主頭を掻きながら沖田を心配そうに見つめる。
「顔色が優れないようだが…」
この松原忠司という男はとても優男なのだ。
その弁慶のような巨漢と坊主頭からは想像できないほど繊細な性格をしている。隊士の中でも慕われていて人気のある人物だった。
「そんなことないですよ!松原さんこそ、唇の色悪くなってますよ?」
沖田は紫色に変色した松原の唇を見てくすくすと笑った。
「あっはは。俺、実はこんな身体してますけど寒さに弱いんだよ〜!」
頭をぺしぺし叩きながら人懐っこい豪快な笑顔を見せる松原。
「へ〜!全然そうは見えませんね!!」
沖田も後ろに付く隊士たちも意外そうに目を丸くする。
この後も屯所に着くまでなんてことない会話を続けた。