「……あぁ」


「…なるほどな」


二人は中の光景を見た瞬間、全てを理解した。

「俺さぁ、富士山は見たことあるけど人の山って見るの初めてだわ」

「奇遇だな八っつぁん。俺もだ」

十人程が重なり合った見事な人の山の傍らで一人だけ竹刀を持ち、立っている道着の人物がいた。


「なんや新八と左之助に齋藤さんやないか」

額に汗を滲ませて立っているのは楓であった。

「随分派手にやってんなー!!これじゃ怪我人が耐えないわけだ!」

原田が納得したように頷きながら言った。

「弱い人間はいらんのやろ?」


(浅野には悪いこと言っちゃったなぁ)

永倉は、元二番隊の部下であった浅野に楓のことで一度相談を受けたことがあったが、その時は軽く流してしまった。だが、今なら浅野が言っていた事がよくわかる。

永倉を見据える楓の目は獣そのものだったのだ。
入隊したときから野性的な目はしていると思っていたが、今の彼女の目はただ血に飢えているようにしか永倉には見えなかった。