「ななな…何じゃ!!まだなんか用があるんか?!!」

情けないことに、石を当てられた事の怒りよりも赤城に対する恐怖心の方が勝っている。
嫌な汗が背中を濡らす。

「そんな怖がらんでもええやろ。それよりこれや」


ガシャンっと目の前に放られたのは一本の竹刀。まさかと思って俺は赤城を見た。

「相手せい」

「ま、待て待て待てーー!俺はもう二番隊の隊士じゃないけん、おめーの相手せんでもええじゃろ!!永倉隊長にでも相手してもらえ!」

「新八いないから言ってんねん。薫ちゃん以外と強いから練習にちょうどええんよ」


練習って…ボコボコにする気満々じゃないか!!

「じゃ、じゃあ沖田先生にでも頼め!!」

「やだ。薫ちゃんがええねん。元二番隊の同士として付き合え」

「そんなわや(無茶苦茶)な事ゆーなや!!」

「早よ道着に着替えて来いや。あっちで待っとんで」


「…浅野、ご愁傷様」

山崎さんは俺の肩をポンポンと二回叩いて部屋に入っていった。

「ええぇ……」






――文久四年 一月二十三日

山南副長・藤堂副長助勤から明後日には帰営するとの達しが来る。

私事では、赤城楓に肋骨を二本折られたため、またも稽古を断念。

今日から隊務に関ること以外の記録はとらない事にする。