幕末異聞

「気になってたんやけど、壬生狼のあんたが、何で昨日うちの事見逃したん?」

女も団子を一本取り口に運ぶ。

「ふふ、実はですね、私昨日刀持ってなかったんですよ」


「…まさかの丸腰か」

「だって刀って物騒じゃないですか!」

女は完璧に呆れていた。

そんなこと気にする様子もなく、隣の男は団子を食べ続けている。

「そういえば、貴女昨日流れの浪人だって言ってましたよね?」

「ん?ああ」

「流れの浪人ということは住む家が決まっていない?」

「流れ者だからな」

「ということは決まったお仕事を持っていない?」

「流れ者だからな」

「つまりお金もない?」



「………流れ者だから…な」