「あ、あなたはどなたですか?!」
((…美代ちゃん、完璧狙いを定めたな))
残りの二人が呆れ気味に何時もとは声のトーンが違う美代を横目で見る。
「私ですか?私は同じく新撰組の隊士ですよ!」
「いや…そうじゃなくてお名ま「あの!!あ、赤城楓様は、今どこにいらっしゃいますか?!」
何とか話を戻そうとお絹は美代の言葉を遮る。
「う〜ん…。確か今日は非番のはずなので、屯所に居るんじゃないですか?」
「そうですか!!あの、お会いすることってできるんですか?!!」
「え?ああ、それは出来ると思いますが…まさか貴女たち楓のお友達ですか?!」
「あ、いやそういう訳じゃ…」
「この子、昨日赤城楓に助けてもらって一目惚れしちゃったんです!」
顔を赤らめ黙ってしまったお絹の代わりにもう一人の娘が代弁する。
「!!!?」
「お、お滝ちゃんッ!ご…ごめんなさい!!別にそういうつもりでお会いしたいわけではないんです!
ただ、お礼を…」
(こういう事だったのか)
沖田は昨日の楓の不可思議な発言の原因がこのお絹であると確信した。
「そうでしたか〜!!では、私がご案内しますよ」
「おい、沖田君。君はこれから巡回だろう?」
後ろから歩いてきた齋藤に沖田は襟を掴まれた。
「今度お蕎麦ご馳走しますから今日だけは見逃してください!」
「君の今日だけは何回あるんだ?…まぁいい。絶対だぞ?」
「はい!一さん大好きです!!」
沖田は齋藤の好物が蕎麦だと知っていて、それを餌に規則に忠実な齋藤を折れさせた。
見事に餌で釣られた齋藤は隊士を引き連れて朝の見回りに出て行った。
「さあさあ私たちも行きましょうか!!」
沖田は上機嫌で三人を従えて屯所への道を歩み出した。
(あの方にもう一度会えるのね!)
沖田の後について歩くお絹は期待に胸を膨らませるのであった。

