幕末異聞


「…は?」


沖田の話を無視してとんでもない爆弾発言をした楓に、沖田は思わず箸で掴んでいた餅を畳に落とす。


「やっぱ乳が足りんのか…」

悩んでいる様子の楓。



「ぶっ!!ふ…あははははははっ!!」


我慢しきれずそこら中を転げながら爆笑する沖田に楓は怒る。

「何がおかしいんや!!」

沖田は、楓の怒った声に目尻に溜まった涙を拭いながら息を切らせて起き上がる。


「い…いや、すみません。でも…貴方がそんな事で悩むなんておかしくて!!」

再びうずくまって爆笑する沖田だったが、ようやく落ち着くとコホンと咳払いをして楓に向き直った。


「いいですか?女性というのは平然と異性の前で乳とか言ったりしません。そんなふうに胡坐かいて座ったりもしません」

「あんたの前で気取る必要あらへんやろ」


「…そうですけど!よく言うじゃないですか。日頃の努力が功を結ぶって。女性らしい仕草もきっと同じです!」


「…乳は?」

どうも胸にこだわる楓に困り果てて顔面を両手で覆う沖田。


「はぁ…、別に胸はさほど関係ないと思いますよ?」

「左之助が胸は女の物差しだって言っとった」

(原田さん…余計なことを)

「確かに、そこで判断する男もいます。でもそれが全てに当てはまるわけじゃありませんから」


「…なるほどな」


楓は沖田の言葉にとりあえず納得する。


「まぁ、餅でも食べなさい」

「どうも」

こうして、沖田と楓の女性論議は幕を閉じた。