芹沢鴨暗殺から二日後の九月十八日。


一昨日とは打って変わって外は快晴で雲一つ見当たらない。
新撰組屯所では今日の天気には不釣合いな烏のように真っ黒な衣装を纏った男たちが忙しそうに歩いている。
本日は芹沢以下二名の葬儀が執り行われているのだ。
流石に筆頭局長の死ということもあり、葬儀は豪華を極めた。葬儀には全ての隊士が出席を義務付けられたが、ただ一人、楓だけは出席を許されなかった。


楓は十六日の事件以来、土方副長の命により部屋から一歩も出ていない。

謹慎処分を受けたのである。
坊主がお経を読み、隊士らが黙祷している中、楓はただひたすら部屋から日の光を浴びてキラキラと光る中庭を眺めている。




――トントン…


突然、襖を小突く音が聞こえた。


「入ってもいいですか?」


返事を聞く前に襖を開けたのは、いつもの着流しではなく、きっちりと正装をした沖田だった。



「…入ってええって言っとらん」


「すみません」


楓は何時もより数段声に張りが無い沖田をこれ以上攻める気にはなれなかった。

「まぁええわ。それより、アンタこんなとこ副長に見られたらまたどやされるで?」

「許可もらいました」

楓は自分から部屋を出ることはもちろん、部屋を訪れた人間と面会することも許されていなかった。