「ふふ。待っていたぞ」
「ふん。狸寝入りをしているなんざ思っても見なかったぜ?」
障子を開けたのは土方であった。その後ろには、一番隊組長の沖田がいる。
「随分とふざけた真似をしてくれるなぁ?土方よ」
「上からの正式な命令ですからね。どんな手を使ってでもあんたを討ち取る」
「やれるものなら…」
芹沢は手元の刀の鯉口を切る。
「やってみるがよい!!」
瞬時に抜いた刀は、思った以上に速く、土方は受身の姿勢を取ろうとしたが、避けるのが精一杯だった。
――ガチャアァァァッ
たった一太刀で置いてあった行灯が原型を留めないほど破壊された。
(なんて馬鹿力だこのおっさん!!)
流石の土方もこの光景には冷や汗をかく。そうこうしている内に次の一撃が来る。
「…っち!!」
全く隙を見せない芹沢の太刀。一人では無理かもしれないと思った土方は沖田を呼ぶ。
「総司ッ!!」
「今行きます!」
「…………ん……う?」
「!?」
土方の応援要請に駆けつけようとした沖田の足元で何かが唸った。
思わず目をやる沖田。
「……お…きた……はん?」
きょとんとした上目使いで沖田を見るのはお梅であった。
「……お梅さん…」
沖田の顔が悔しさに歪む。
「何故…来てしまったんですか?」
それだけ言い残し、沖田はお梅の傍を離れ、土方の元へ向かう。
お梅は、今何が起きているのか把握できないまま、沖田の向かった先へ視線を移す。
「……あぁ!!!!」
お梅の目に飛び込んできたのは、足から血を流し、ふらついている芹沢と止めを刺そうとする沖田と土方の姿だった。
「や…やめて!!!やめてーーッ!」

