幕末異聞


「うぅ〜……」


「どうしたん?」



「…寒いな」


「くすくす。もう、しょうがない人やなぁ」


隣で横になり、寝ぼけている男に自分が着ていた着物を掛けてやる女。



「……どうして…今日…来たんだ?」


男はまだ意識を完全に手放してはいないようで、なんとか言葉を繋ぎ女に質問する。

「ふふ。会いたいからに決まってるやないのぉ」


女は優しく男の頭を撫でる。


「……お梅…」

「なんどす?」



「……や………いい…」


男はそれっきり何も言わなくなった。どうやら深い眠りに就いてしまったようだ。


「もぅ!最後まで言ってから寝ておくれやす!」

女は少し拗ねたように男の肩を叩く。

そして自分も男にピッタリと寄り添って床に体を横たえた。


「うちはあんたのこと好きやえ。
芹沢はん…」


男の耳元で囁くと、女も眠りに就いた。