幕末異聞


――ザァァァァ…


「雨、止みませんね」


「今回ばかりは、この雨も俺たちの見方だなぁ」

「雨が止む前に事を済ませよう」

一様に黒い羽織と袴を身に纏った男が三人、仏光寺通りに集まっていた。
この通りを左に曲がると新撰組の屯所である八木邸が見えてくる。


「明かりが消えた。今しかねぇだろう」

三人の背後から同じく黒い衣装を着た男が近づいてきた。

「ぷっ!土方さん似合うな〜。悪役っぽいのが」

「確かに!」


「…総司、原田君。お前らも斬られたいのか?」

「「冗談ですって〜」」


「まぁまぁ。土方君いいじゃないか。あながち間違いではなさそうだし」



「…山南さんまで」


山南の悪ノリに土方は唸った。

「もういい。早速、中の状況と踏み込む手順を説明しよう。
原田君、山南さん」

名前を呼ばれた二人は和やかだった雰囲気を一変させ、真剣な面持ちで土方を見た。

「二人は平間・平山の始末を頼む」


原田と山南は土方と目を合わせ、了解の合図を送っる。

「総司」

「はいはい」

先に名前を呼ばれた二人の態度とはまるで異なり、普段と変わらぬ笑顔のまま土方の顔を見た。

「お前は俺と芹沢を殺る。だが、どこの間に誰がいるかわからないから、その辺は各自臨機応変に対応してくれ」

「なるほど。いきなり斬られたら芹沢さん、ビックリするでしょうね〜。怖い世の中だ」


「「「……」」」



相変わらず常人と少しずれている沖田に三人は閉口した。