「しゅくがかい?」


「なんだ?お前聞いてなかったのか?!」

「全く」


九月十六日。
この日、永倉が指揮を取る二番隊は定期的に行われる巡回の真っ最中だった。

永倉を先頭に今日は五人が巡回に当たっている。

楓もその中の一人に含まれていた。


「ほら、松平侯から新撰組を拝命していただいただろう?
それを祝して今日の夜に新撰組総出で島原の角屋で大宴会を開くんだよ!もちろん、お前も来るよな?」



「…まぁ、タダ飯にありつけるんなら」


「んじゃ決まり!!
ついでにお前の入隊祝いもしちまおう!」


「ついでかいっ!!」


永倉と楓はいつもの調子で会話をしながら市中を見回る。


結局この日の巡回は特に変わった出来事も無く、無事終了した。



「ん?」



楓の前を歩いていた永倉がちょうど綾小路通りを右に曲がった所で妙な声を上げた。
後ろを歩いていた楓と他の隊士たちからは声を出した永倉の姿は見えない。


「どないしたん?」


敵襲かと思った楓は素早く右に曲がり永倉の横に並ぶ。


楓が抜刀の姿勢をとっているのに対し、永倉はなぜか立った姿勢のままじっとしている。



そして、屯所の門に向けてすっと指をさした。