「こんな陰気な部屋にいたら体のいたるところにキノコ生えちゃいますよ?」

「うるせぇ」

「あ!頭にキノコ!!」

「そりゃよかったな」



秋の晴天にもかかわらず、部屋の障子を締め切った薄暗い土方の部屋には仕事中の土方と沖田がいた。
沖田の軽口を土方はいつものように適当に流す。


「はぁ〜。無愛想なお人だ。どうです?気晴らしにお汁粉でも「奢る事になるからぜってー嫌」


土方は背中越しでふてくされる沖田を無視して席を立ち、部屋の隅にあるよこ置きから刀を取り、手入れを始めた。


「お前もちゃんと手入れしとけ」

足を投げ出し欠伸をしている沖田に対し、土方は少し怒ったような真剣な眼差しを向ける。


「くくっ、土方さんは顔の手入れをしたほうがよさそうだ」

「あん?」


「髭。生えてますよ?」


自分の頬に人差し指を当て、ニヤニヤと意地悪な笑顔を浮かべながら沖田は土方の部屋から去っていった。



「……口の減らねーお坊ちゃまだな。ったく!」


沖田が出て行った障子に向かって独り言を言うと、土方は自分の顎に手を当てて摩ってみる。


確かにジャリジャリとした感覚が手に伝わってきた。