「邪魔をしてすまないね。子どもたちと遊んでいたんだろう?」

「気になさらないでください!ちょっといざこざがあって困っていたところだったので!!」

「はははは!そうか。それはよかった」


山南は寂しそうに目を細めて笑う。


「山南さんはどうしてここに?」


山南のその表情に気づかない振りをして沖田は微笑しながら尋ねた。




「………新見副長のね。墓参りに…行ったんだ」



――ザァァァ…


その瞬間、強い風が吹いた。

二人は風が止むまで何も言わなかった。


「そうでしたか。
壬生寺のご住職さんに新見さんの供養をお願いしたとは聞きましたが。
そうか…眠るところが見つかってよかった」



「……私は…図々しい人間だ…」


「…え?」


「自分で…切腹するよう仕向けたくせに…今、こうして平然と墓参りをしている…」


「…」


「いや、悪い。今のは忘れてくれ」


山南は、真剣な顔で自分を見つめる沖田の頭に手を乗せた。


「君といると何でも話してしまいそうになる。不思議だな」


そう言うと山南は立ち上がり、その場を去って行った。



「……」


石段に座ったままの沖田は、山南の背中を見送りながら自分の中に微かな不安を覚えていた。