屯所内が新見の件で揺れている頃、壬生寺の境内には子どもと一緒になってはしゃぐ沖田の姿があった。
この青年は、大人の難しい話を聞くよりも子どもと戯れているほうが性に合うようで、非番の日は大抵甘味屋を渡り歩くか、こうして子どもと遊んでいる。
「そうじはうちと手ぇ繋ぐんやで!」
「タマちゃんだけずるいで!
うちもそうじと手ぇ繋ぎたいーッ!!」
「ははは、困りましたね〜…」
二人の女の子に両側から腕をグイグイ引っ張られ、沖田は苦笑いを浮かべるしかなかった。
その時、一人の男の子が沖田の背中を突付いた。
「どうしました?健太」
振り向いてみると、健太は境内のはずれにある林の方向を向いて指を指している。
「誰かいよる!そうじの知り合いちゃうんか?」
「知り合い?」
健太の指が指す方向に視線を合わせる。
「山南さん?」
そこには木陰から腕を組んでこっちを見ている山南がいた。