「どうしますか?自分で腹を切るか。斬首にするか」

「その調子だと切腹する前にちびっちまいそうだな?新見さんよぉ」


土方が新見に詰め寄る。
新見は汗でぐっしょり濡れた額を袖で拭く。


そしてゆっくり瞼を開き、目の前の“鬼”の顔を見た。



「………自分の始末くらい……自分でできる」



新見は絞り出すような声たが、その表情は、恐怖を感じていないといった様子だった。



「…そうかい。
じゃあ、その勇士を拝ませてもらうとしようじゃねーか」

「…」

土方は、口元だけで笑い、少し離れたところに姿勢よく正座した。

切腹をする者へのこの男なりの
敬意の表し方なのだろう。

山南は音も無く襖を閉め、立ったまま新見を見ている。


新見は膳に載っている杯の酒を一気に飲み干し、二人の前に出て正座をする。



「短刀はここに…「いらぬ」

流石の土方もこれには驚いた。


「この愛刀と一緒に果てたいのだ。手出しは無用。
介錯も必要ない」


「……わかった」


今まで数々の悪行をしてきたとは思えない潔のよさに山南も土方も目を見はった。