幕末異聞



――バンッ!



目の前の襖が勢いよく開かれた。

襖の正面にいた新見は咄嗟に杯を膳に置き、近くに置いていた刀を手に取った。

(長州の残党か?!)


ソロソロと目を暗い廊下に向ける。
新見の隣で酒を注いでいた遊女の表情が強張っている。


開かれた襖から現れたのは同じ副長の土方と山南であった。


新見は見知った顔だとわかった瞬間、緊張が解けたようで、なんとも絞まりの無い顔で二人を見た。



「なんだ、君たちもここで飲んでいたのか?奇遇だな」


「奇遇なんかじゃありませんよ新見さん。俺たちはあんたに用があってわざわざここまで出向いたんだ。
おい!女!!」


土方は部屋に入り、新見の隣に座っている遊女に鋭い目を向ける。



「ひっ!な…なんだよ?!」


キッと遊女は怯えながらも睨み返す。

「部屋から出ろ。さもなくば斬る」

土方の言い方にその言葉が脅しではない事を察知した女は素直に早足で土方の横を通り部屋から出て行った。