――トン…
襖を叩く音で山南の言葉は遮られた。
「入れ」
「失礼いたします。
土方副長、山南副長、準備を」
「わかった」
「…」
襖の外から聞こえてきたのは島田の声。
それは、いよいよ新見を粛清するときがきたことを意味していた。
土方は立ち上がり、脇指しと愛刀を帯に差す。
「山南さん、早く用意をしてくれねーか?」
襖の取っ手に手をかけたまま後ろでまだ座っている状態の山南に声をかける。
「…ああ。そうだな」
先に廊下に出た土方には山南の表情を伺うことはできなかった。
いや、見ようとしなかったのだ。
“鬼”になると決めた土方にとって、山南の人間くささは煩わしいものでしかない。
(俺は前に進むだけだ)
そして、運命の時がやってくる。

