――文久三年 九月十三日 新撰組筆頭局長部屋



(今日は厄日だろうか)


俯き加減で畳の目を見ながら楓は今日という日にうんざりしていた。

現在、楓がいるのは芹沢の仕事部屋である。

先刻、永倉と別れた楓は自分の部屋に向かう途中に芹沢とばったり会ってしまったのだ。


楓はこの仕事部屋に何回か訪れているが、酒を飲むばかりで仕事をしているところなど見たことが無い。


(今日はホンマ憑いとらん…。きっとまた酒の相手させられるんやろな)


楓は八木邸の離れで酒を飲んで以来、一週間に一、二回の頻度で芹沢の酒の席につき合わされていた。


「今日はこんな昼間っから酒ですか。
うち夜巡回入っとるんであんまり長い時間付き合えませんよ?」

楓は抑揚の無い声で先に断りを入れる。が、今日の芹沢は微妙に様子がおかしい。

「がっはは!!今日は酒は飲まん。
そちに用があって呼んだのだ」

そう言うと、芹沢は衣類が入っているらしい桐の立派な箪笥から何かを出してきた。


「何ですかこれ?」


楓の目の前に置かれたのは群青色の風呂敷包みであった。


「これをお前にやろうと思ってな!開けてみろ」


「…では、失礼します」


恐る恐る風呂敷包みを広げていく。


中には衣類らしきものが透けて見える。



「………これって」