「あぁ…暇ですねぇ」

先ほどから何回この言葉を繰り返しているだろうか。

総司は鴨川沿いの道を数人の隊士と一緒に歩いていた。


壬生浪士組の重要な仕事、市中見回りの最中である。京都に不逞の輩がいないか、不審な動きをしている者はないかなどを見て回っているのだ。



「仕方ないですよ。先の政変で攘夷派は京から追放されたも同然ですからね!我々が反幕府勢力に勝利したということです!!」

近くにいる若い隊士が目を輝かせながら勝ち誇るようにそう言った。


(………そうならいいですけど)


総司にはまだ初々しい隊士の言葉を素直には受け取れなかった。


「そうですね」

微笑しながら思いとは裏腹の返事をする。