黒猫の息が止まっているかを確認する。
まだ温かい体温が、轢かれてからそれ程時間が経っていない事を表した。

「可哀相に。」そう思って、これをどうしようかと考える。
こんな所に置いておけば、また車に轢かれてしまい、もっと酷くなるだろう。

そうならない内に、住んでいる家の庭にでも埋めてやろうかと考えた。

猫の死骸を持ち上げる。
それと同時に、傷口からまた血が溢れ出し、俺の手を伝う。

生温い。

そう感じて俺は只その様子を見つめる。
自分の白い腕に、猫の朱い血が滑る。
それはまるで、真っ白なミルクに真っ赤な苺を落したみたいで、とても綺麗だった。

白と朱の融合。何とも言えない艶やかな妖しさが、その場を包み込んだ。

その妖しい雰囲気が俺をも巻き込んで、俺は完全にその世界観に飲み込まれた。



赤く朱く染まった黒猫と、その黒猫と同じ真黒な髪の真白な肌の男。



まるで時が止まったかのように、周囲の世界は静寂だった。
その静寂さが一層、妖しげな雰囲気を煽らせた。

一瞬一瞬が永久にも感じ、俺はその空気に浸った。



そしてその静寂が、終に破られた。