そして通常旅人は、冬が来れば宿の良い客になり、暖かい部屋をとって詩を詠っているか土地を去るものである。

 だれもこない広場にぽつねんと佇んでいるものではないのだ。


「王子サフィールの名が重い。君には言うが、宰相マグヌスのものの言い様は以前とは、父王がいた頃とは別人のようだ」


 そして、内容を聞けば、
「もっと皆を取り締まれ、何が何でも税を、罰をとばかり唱えるのだ。何故なのだろうか」


 王子は円形の噴水の周りの階段に座り、ぐったりとしてうずくまってしまった。


「お心は痛いほどよく理解できます」


 正直、一国の王子が広場で詩人のまねごとをし、なおかつその姿を周囲にとけ込ませているのには胸が痛むどころではないのである。