これは噂だが、誰かが意図して流したものか、星読みのひとりがへまをしたのか、だれかの妄想か、今はわからない。

 夏の終わりに。

 王は凶星の方角に流れた星と共にお姿が見えなくなってしまわれた。

 今は玉座を現王子が守っているそうな。

 王家の築いてきたものは、そんな風評に負けるものではなかったが。

 しかし噂と共に街は乱れた。

 人は皆、疑いを抱き、髪の毛一筋でも傷つけられるのを恐れ、心は離ればなれになった。

 ただひとつ、リッキーの母親のリリアの店だけはあたたかく、雪さえとろけるようなやわらかなオレンジ色の明かりが灯っていた。