勿忘草


「…それじゃあ私は戻るわね」

そう言って手をヒラヒラと振りながら柏木は廊下を歩いていった。

彼女が歩くたびに男達が振り向く。


その後ろ姿を見守っているといきなりガバッと背中に何かが乗ってきた。

「あ~や~し~い~」

そう言いながらニヤニヤと背中に乗っかかってくる陽介に

「だからそんなんじゃねぇっていってんだろ」

「あでっ」


ペシッとおでこにでこぴんをかましてやった。


いててとおでこを押さえながら、だってよぉ~と更に言葉を続けようとする陽介を無視して、また席に戻る。

「相変わらず、随分と親しげだな」


納得いかなそうな態度で、食べ終わった弁当を片付ける秋夜。

「だからそれはっ」

「付き合っちゃえばいいのに」

反論しようとするとまた陽介が口を挟む。

「だって柏木茉莉花は美人で成績優秀、性格も良くて、家も金持ち。告られたら断る理由がないだろ~。俺が見るにぜってぇ総護の事好きだなありゃ」

俺に背を向け柏木を褒め称える陽介。