陽介は茉莉花の元へ向かう総護の後ろ姿を見ながら
「柏木茉莉花ってさ、絶対総護に気があるよね」
「さぁな」
秋夜はさも興味がなさそうにその話を受け流す。
「だってよく総護に会いに来るし、あの顔!顔赤くしちゃってさ。」
陽介はニヤニヤしながら2人を見つめていた。
「………。」
「ねぇみて!あの榊君と一緒にいる子…柏木茉莉花じゃない?」
近くでお菓子を食べながら話している女子が話し声が聞こえてきた。
「ホントだ~え~榊くんと付き合ってたの?ショック~」
「でもさぁ、なんか美男美女って感じてお似合いだよね~」
キャハハと笑いながら話す彼女たちの話を聞いて、陽介は再び2人を見つめた。
そしてふと真面目な顔で口を開く。
「…俺さ、そろそろ総護も誰かを好きになってもいいと思うんだ」
その言葉に今まで聞き流しながら
弁当を食べていた秋夜の手がピタリと止まった。
真面目な顔で、どこか辛そうに話す彼は、いつもの陽介ではない。
いままで聞き流していた秋夜が陽介の顔を見つめる。
その視線に気付いた陽介は少し焦ったようにガタリと立ち上がった。
「おっ俺、ちょっとからかってくる!」
そういってそそくさと総護の元へ走っていった。
……グサッ
教室の端で小さく鈍い音が響いた。
その机の上には弁当の中で、グサリと箸に貫かれた焼き魚があった。
「…あの女嫌いなんだよ」
一言そう言ってから、秋夜は勢いよく貫かれた焼き魚を一口で口の中に含み、心底不快そうな顔をしていた。
