勿忘草



何?




今のは…?



一瞬誰かが見えた。



笑顔で私の名前を呼ぶ人。








ここに誰かいた…?














けれどそこにはもう誰もいない。




レンガが積み重なって並んでいるだけ。



伸ばした手は行き場所をなくしてしまい、
寂しく吹いた風に当たった。







バン


「総護様、シオン様。大変お待たせいたしました。」




突然、ドアの閉まる音と共に、
空木さんの声が聞こえた。



それに気が付いて振り向けば、
車の前で頭を下げている空木さんがいた。



「おっ、お疲れ様。書類は無事貰えたか?」

立ち上がって空木さんの元へ向かう総護君。


私もそれに続く。




「はい、なんとか。」


総護君の問いに顔を上げて、苦笑しながらそう答える空木さん。







何かあったのかな?



そういえば、この水族館から病院まで大した距離はないのに…


戻ってくるのが遅かった。




「何かあったんですか?」


不思議に思い、空木さんに尋ねてみる。


すると彼は困ったように笑う。

「葛城が書類を無くしてしまったんですよ。」




書類を…


無くした?






葛城先生が?



総護君と顔を見合わせる。



私は葛城先生と空木さんが、書類を探すところを想像してみた。






「「…ぷっ」」