勿忘草






沈んでゆく夕日を二人で眺めた。



とても美しい光景。




けれど光が沈んでしまう事が悲しい。



もうすぐこの空が闇に覆われてしまう事が恐ろしい。





時が経つにつれて伸びる影に、
不安を覚えた。






このまま時が止まってしまえばいいのにー…。





そうすれば太陽が沈むことも、


空が闇に染まる事も、







もう貴方と離れることもないのに。




そんな事を願ってしまうほど、
総護君と二人並んで夕日を眺めるこの時間が、

心地よかった。







…けれど何か足りない。






ふと感じる物足りなさ。





「…?」





無意識のうちに視線が隣に移してしまう。





総護君がいない側の隣。




そこには私達が座るレンガが積み重なって並んでいるだけ。



私は何もいないレンガの上をそっと触れた。




私の手によって、夕日に照らされていたレンガに、陰にできる。








分からない。




なんだろう、この空虚感…







ここに何か、"あった。"




とても大切なもの。







そう、


何か…





とても…




とても大切なひと。











  "『シオン』"


「!!」



一瞬見えた残像。







とても落ち着いていて、優しい声。







ふっ、と優しく笑うその残像は、顔を見る前に消えてしまった。