「もう、大丈夫そうだな」
あれからしばらく二人、パラソルの下で休んでいた。
わいわいと賑わっていた館内も、人が減り始める。
気温も少し下がり、
太陽が傾き始めた頃、総護君そう言って立ち上がった。
「今日はもう帰るぞ。」
「え…」
そう言う彼に、私は残念そうに声を挙げる。
まだ少ししか見れてない。
総護君が私の為にそう言ってくれているのはわかっていたけれど、
せっかく来たのに帰ってしまうなんて、
なんだかもったいないと思った。
「でっ…でも、私はもう大丈夫だから…」
「駄目。」
そんな私の要望を容赦なく却下し、
彼はスタスタと歩き始める。
朱色に染まる空。
夕日によって赤く染る景色の中、
彼の背中が昔より広く見えたような気がした。
その広い後ろ姿に、妙な切なさを感じる。
その背中を
懐かしく感じるのも、
寂しく思うのも、
真っ赤に沈んでゆく夕日のせい?
「ほら、置いてくぞ」
そんな彼の背中を見ていた私に、
少し振り向いてそう声を掛けてくる。
けれど私の返事を待つことは無く、
彼は再び先を歩き始めた。
そんな彼を、
私は後ろから追いかける。
一日の終わりを惜しむように、寂しげに鳴く蝉の声は、
ただ辺りに悲しく響いた。
