「よしましょう。こうなったら他の国に落ちのび、戦争をしている国に行ってたくさん人を倒して、末に仕官するのは?」


 リック、と再三、王子はリッキーの呼び名を間違えた。が、リッキーはそう呼ばれるのに抵抗を示さなかった。

 今更、ということもある。


「クール、かとも思えばクルーエルで、どうなっているんだ、その頭は」


 ため息のようにいわずもがなのことを言う王子。


 性格が反転したというより、破綻したといった方がふさわしい。


 リッキーの心の中では、人を傷つけたくない優しい心と、都合の悪い者を全て抹消すべきだ、との思いが対立し、渦巻いていた。