そのとき二の腕にふと触れた感触に、不思議な感覚を覚えながらも、サフィールはまっすぐに沼を抜けた。 「ありがとう、リック」 というと、 「はあ? この沼地って別段なんでもなかったですね。てっきり罠だと思っていたのに」 サフィールは驚いて、 「別段って、あの声は君だったんじゃないのか? 悲鳴をあげていたじゃないか。私は何度振り返ろうとしたことか」 「あ。それは……ちょっと、ヒルに噛まれて。でも、そんな、悲鳴だなんて。ボク、そんなに軟弱じゃないですよ」