ピンポーン♪


インターホンが鳴った。こんな朝っぱらから誰だろう?


私はまた布団に潜り込んだ。もう起きる時間だけど、布団から出たくない。


「も、もとか!! 起きなさーい!!」


母親がかなり慌てて部屋に入ってきて、こんもりと盛り上がった掛け布団を力任せに剥ぎ取る。体温が一瞬で奪われ、鳥肌が立つ。

反論しようとしたら、母親の相貌は青ざめていた。


「ど、どうしたのお母さん。ひょっとして、身内に不幸でも?」


「そうじゃないけど、アンタにお客さんが来てるわよ」


「え? 私に??」


意味が分からない。とりあえず制服に着替えて、そのまま玄関に出る。


「はい、どちら様……」


顔を出した途端、ビクッとした。

目の前に、サングラスを掛けた20歳半ばの黒スーツの男が立っていたのだ。


「貴女が早乙女もとか様、ですね?私は安元(ヤスモト)と申します」


そう言って名刺を渡された。


「草薙財閥 秘書 安元博明(ヤスモトヒロアキ)……?」


待てよ、草薙財閥ってことは……。


「大和お坊ちゃまがお待ちです。どうぞこちらへ」


や、大和お坊ちゃま!? ということは、やっぱり……。


家の前には何とリムジンが停まっていた。住宅街のド真ん中だから、近所の人たちが珍しいものだと見に来てしまっている。こんな高級車に乗れと? こんな後部座席の長い車なんて初めて見た。


唖然としながら立っていると、ウィーン、と窓が自動で開く。


「おはよ。迎えに来たよ」


会長が爽やかな笑顔で挨拶してきた。