突然、目の前が暗くなった。目を閉じてもいないし、夜の時間帯でもない。


ただ言えることは、唇から生温かい感触を覚える。私の口唇に会長の唇が重なっているのだ。


瞳孔が開く。頭の中は思考停止、何も考えられなくなる。


私の口の中に、会長の熱い吐息が入りこんでいく。


数秒で唇は解放された。会長はゆっくりと瞼を開け、余裕の表情を見せた。私は銅像のように硬直する。


そして頬を緩ませ、笑顔を見せた。多分、普通の女性だったら魅了されると思う。


でも、私にとってこの笑顔は悪魔の微笑みのようにしか見えなかった。


「これは『契約』のキスだよ。これからお前は俺の許で働いてもらう。つまり、今日からお前は俺の奴隷だ」


ど、ど、奴隷……?


言葉を口の中で反芻し、目が点になっている。意味が分からない。何さ、奴隷って。その様子に会長は嘲笑った。


「今日は災難だったな。俺が宣言した後ももみくちゃにされて。笑い堪えるのが大変だったんだぞ」


やっぱりこの人、Sだ。超ド級のサディスト!


何も言い返せぬまま、動けない私の鼻の先に人差し指をチョンッと当てる。


「という訳で以後よろしく、俺のど・れ・いちゃん♪」


そのままこの場から出てってしまった。しかも専用通路を使って。


一人残された私は、扉を伝って座り込んだ。絶対腰は砕けてる。しばらくは立てそうにない。


何が起きたというのか。


「い、今、私……」


そっとした唇を触れる。まだ熱い。




生徒会長にキスされた⁉ 一体何故⁉

ただでさえ、生徒会に入るなんて一言も言ってないのに庶務に任命され、さらには奴隷だなんて言われて。