大きな手が私の口を覆い被さる。苦しくなって、放してもらう。


「はぁ・・・・何してるんですか!」


「・・・バイト中」


「見れば分かりますけど、うちの学校ってバイト禁止じゃ・・・・」


「・・・お前がバラさなければバレない」


「おい、サボるな。伊藤!」


「・・・はい」


伊藤なんて、偽名まで使っているのか。


「・・・用が済んだら、さっさと帰れ」


何をー?同じ生徒会のメンバーといえど、今の私はお客様だぞー?


(っていうか、苦手なんだよね、椚先輩って・・・・)


長身でツンツン頭が特徴的。でも基本的に無口で無愛想。必ず声を発するときは最初に「・・・」を付ける。
会長もそうだけど、この人も何考えているのか分からない。
会計担当の椚要先輩・・・・・。


こうなったら、奴の言う通りさっさと帰ってやる。


飲み物売場へ行く。おっ、新商品の梅ジュースなんて出てる!買いだな、買い。
レジに行こうと思ったけど、女の子達が椚先輩のレジに殺到している。隣のレジはがら空きで、眼中に入ってない。


(こっちのレジで会計しよう・・・・)


私がレジ台に商品を置こうとしたその時。


「キャー、いやー!」


突然、店の外が騒がしくなった。どうしたんだ、また椚先輩目当ての女達が殺到しているのか?
しかし、そうではなかった。


ドカドカドカ!!


帽子を深くかぶったサングラスの男が勢いよく店の中に入り込んできた。
そして、懐から鋭いナイフを取り出す。


「静かにしろ!!命が惜しければ、金を出せ!!」