「えっ?」

「我以上に力のあるそなたなら羅国を治められるであろう。……羅国のことは頼んだぞ」


 そう言うと鼬瓏は立ち上がり、自室へと歩いていった。

 残った側近の者達は、しばらくの間、呆然と立ち尽くしたままであった。

 ただ、鼬瓏を長いこと支えてきた趙 來(チョウ ライ)だけが、何事かを考えていた。



 そして、ふと何かに気づいたようである。

 來は、皆が我に返る前に静かにその場から立ち去り、鼬瓏の部屋へと向かった。



 コン、コン、コン。



「鼬瓏様、いらっしゃいますか? 來です」

「ん? 來か……。どうした?」


 その鼬瓏の声と共に、來の前の扉が開いた。