駿瑛へ

  新皇帝即位の件は、耳に入っていることだろう。

  突然のことで驚いたかと思う。

  何も告げずにいたことを許して欲しい。

  我は、今、榎国に来ている。ここで暮らすつもりだ。

  羅国にはもう戻らないだろう。

  この先、会えるかどうかわからぬが、元気で。

            鼬瓏より




 そして、昨日見た夢を思い出す。




 鼬瓏が羅国の皇帝を退位し、榎国へ行く。




 彼は幸せに暮らしていた。




 そこには彼の血を受け継ぐものが……。




「……あれは、正夢なのか?」


 駿瑛は、側にいた側近にも聞こえぬくらい小さい声で、そうつぶやいたのであった。





 緩やかな流れではあるが、確実に時が過ぎていく。


 知らず知らずのうちに、世界が変わるその時を迎えようとしていた。