二時間ぐらい歩き回ったが何の手がかりも見つからず、
佐伯のところに入る報告も進展は無かった。
が、その時京介の五感が何かに反応した。
まだ七時前だが、
大通りをはずれると辺りはすっかり暗闇の世界、
ネオン輝く大通りからはまるで別世界。
二人はそんな裏通りに来ていた。
そしてそこにある建設中の工事現場、
京介はそこからなにやら金属音が聞こえたように感じた。
京介に透視能力は無いが、
わずかな異変に反応する能力は人一倍だった。
「警部さん、俺、この中を調べて来ます。
あそこに地下室へ降りる階段が見えるから行ってみます。」
「そうか、じゃあ私も行こう。」
と、二人が階段を降り始めた時だった。
背後に人の気配を感じた京介が振り返ると、
男が二人立っていた。
京介はその気配に殺気を感じたが、
佐伯は馴れ馴れしい態度で笑みを浮かべた。
「佐伯警部、こんな所で何をしているのですか。」
男の一人も笑みを浮かべながら話しかけて来た。
二人とも30代の目つきの鋭い男だ。
「しっ、今探索中だから声を落としてくれ。
東条君、この二人は捜査五課の木原刑事と吉田刑事だよ。
やはり君達も違法ドラッグの捜査かね。」
捜査五課と言えば組織犯罪対策や
薬物事件専門の部署だ。
やはりチーズの捜査か…
と誰もが思った。が…
「東条、騙されるな。
そいつが黒幕だ。」
四人が階段を降り切ると、
そこから弱々しいが望月の必死な声がした。
「望月… 」