京介の目には、
流山のその肌の様子や目の表情から、
安本より重症に感じられた。
愛飲歴は同じ一年ほどだが、
流山は一年に入った時から周りの目を気にした高校生活だったらしい。
それだけチーズに頼る気持が大きくなったのだろう。
今は自分の体力、知力の衰えを感じるらしく、
ことが公表され、
父親に迷惑が掛かる事を異常なまでに怯えていた。
それこそ自殺でもし兼ねない様子に見えた京介。
安本に関しても成り行きであんなことを口にしてしまっただけで、
本心は個人的な問題には関りたくは無かった。
そんな面倒な事はカウンセラーがすれば良い、と思っている。
自分がすべき事は…
早く事件を解決する事。
流山の状態は…
少なくとも親には知らせて、何とかしてやりたかった。
何事にも無関心できていた京介、
考え出せば、なんでもかぶってしまうそうだ。
午後になって、
京介は生まれて初めて警視庁の門をくぐった。
学校に来た二人の刑事、
木頭と佐々木を尋ねて来たのだ。
本来なら高校の教諭と来るのが普通だろうが…
面倒な事は嫌いだった。
自分が見たこと調べた事は
自分の口から伝えたかった。
「生憎二人は出ておりますが、
私が話を伺いましょう。」
そう言って京介を捜査本部に通したのは、
佐伯警部という穏やかな感じの男だった。
「あの二人の上役さんですか。
同じ事件を担当している… 」
「もちろん、暁高校の事件ですよ。」
佐伯は笑みを浮かべながら京介を見ている。
