天使と野獣


好きで生徒会長になったのなら、
雑用の事も想定内だったのではないのか。

それがチーズにまで行くとは… 
そのことが理解出来ない。

が、現実にこいつは… 悩んでいる。


そして、誰か話の出来る相手を求めているようだ、
と言う事は理解できた。

このまま話を聞けるなら、
黙っていたほうがスムーズにことが進む、と思っている京介だ。

そして安本は話を進めている。



「あいつとは中学からの友達で、
中学時代は時々一緒に映画を見に行ったこともある仲だった。

半信半疑であいつがくれた粉末を飲んで見たら、
気持が軽くなった。

その時は本当に感謝した。
だけどその後… 

それは違法ドラッグだと聞かされ、

皆に知られたくなかったら、
これから定期的に買うように言われた。

違法ドラッグと聞いて目の前が真っ暗になった。

それでも不思議な事に、
分っていてもあの気分が忘れられなくて… 
一年以上も続けてしまった。

だけど最近になって
一回一袋では物足りなくなって来ている。

怖い… この先どうなるか不安で… 
じっとしていられなくて、
気がついたらここにいた。」



話しながら安本は
訴えるような目つきをして京介を見ている。

チーズがどんな副作用になるのか分らないが、

ヘロインが入っているということは
中毒が始まっているのかも知れない。

だからより多くの量を必要として来た。


その頃から増田がチーズの密売をここで始めたとすれば、
他の奴らにも影響が出ているのかも知れん。

あの桜本たちも… 
何故あの二人は青山通りまで行ったのだ。

増田から買えなかったのか。

そうか、使う量が多くなった客は
あいつらに回していたのだ。

増田は客を増やすのが目的。

いつまでも自分が手渡す事はしない。