「どうします、望月さん。」
「どうするって、あいつの言うようにしておけ。
また待ち伏せされても嬉しくないからな。
俺は今のことは無かった事にする。
渡辺、あいつの言った様に、
お前は同じクラスだから悟られるなよ。」
望月はまだ痛みが鮮明に残っている顔や腹部に手をやりながら、
ここは人目の無い所だったが、
街中や校内でこんな事をされては、
自分たちのメンツが丸つぶれになる、と思い
消極的な言葉を出している。
「だけど… このままでは。」
と、今までほとんど口を開かなかった是枝誠二が、
このまま放っておいては俺たちの名折れだ、
と言わんばかりの言葉を出した。
その言葉に… 自分たちのプライドが顔をもたげてきた。
確かに東条京介は恐ろしく厄介な存在だが、
増田が自分達を隠れ蓑にして
チーズを校内で販売していた、
と言う事が無性に腹立たしい。
今までは周囲から不良と後ろ指をさされても、
我関せず式に肩で風を切って堂々としてきた。
それこそが自分たちなりの青春だった。
それが卒業間近にして
増田に利用されていた事がわかり…
このままでは終わらせたくは無い、という強い憤りが生じている。
「是枝、お前… そう思うか。」
「望月さん、俺もこのままにしたくは無い。
このまま行けば増田の仲間と見なされてしまう。
東条が知っていても、
他の奴らはどう思うか…
結果は見えている。」
「そうだな。俺たちのような不良は
黙っていても悪人や犯罪者呼ばわりされるのが落ちだな。
よし。東条は今学校へ戻った。
俺たちは増田を探そう。
誰か増田の行きそうな場所を知らないか。」
望月たちは、自分達が増田に利用されていた、
と言う事が次第に大きくなり、
頭に来ていた。

