「俺も見た。
東条さんのクラスの安本が
焼却炉の傍で増田と会っていた。
何かポケットに入れて急いで教室の方へ来たなあ。
増田はしばらくそこに立っていたが… 」
今度は川本幸雄が声を出した。
やはりこうして改めて考えれば、
増田はそれなりに怪しい動きをしていたのだ。
「安本… どんな奴だ。」
「東条、お前聞いていなかったのか。
お前のクラスの安本だと言っているのよ。」
と、望月が呆れたような声で京介に話している。
が、すぐにもっと呆れる言葉を聞く羽目になった。
「ああ、俺のクラスの安本と言う事は聞いた。
だからどんな奴だと聞いているのだ。」
「安本と言えばお前のクラスの秀才で、
この間まで生徒会長をしていた奴じゃあないか。」
望月は呆れたような顔をして仲間を見てから、
京介に、これなら誰でも分かるだろうと言うようなと言葉を出した。が…
「そんな事は知らん。とにかく特長を教えてくれ。」
そうなのだ。
いくら言われてもクラスメートの顔や名前など、
関心が無かったから全く覚えていない京介。
いきなり言われても、
初めから頭に入っていないものは思い出すわけには行かない。
それが東条京介なのだ。

