天使と野獣


「確証には至っていないが… 
今朝、二年生が二人死んでいた、と言う話を聞いただろう。

あいつらはチーズをやっていた。

俺は昨夜、あいつらが
売人から買っているところを目撃した。

その前に… 」



京介は吉岡の転落死についても
自分の推測、持論を望月たちに聞かせた。


チーズの売買を目撃した、
と平気な顔をして話す京介に、

不良たちはそれだけで驚いたような顔をしている。


そんな事は警察に通報するか、
俺たちのように、

危ない匂いがする話には
『見ざる・言わざる・聞かざる』式に

通り過ごすのが普通ではないのか。 


これではわざわざ危険の中に飛び込んで行くようだ。

どうでも良い事だが… 
少しでも闇の世界を知っている自分たちにとっては、

いきなり腕力で襲ってきた奴だが、

同じ高校の生徒、
何故か気になる存在だ。



「本当なのか。」


「ああ、お前達は派手に
不良だ、番町だ、と粋がって喜んでいても、
影では深刻な事態が進んでいるのさ。

それで俺は、今日二人から話を聞こうと思って登校したら
死んでいたと言うことだ。

だからすぐに二年生に
あの二人がこそこそ会っていた奴がいなかったか調べさせた。

それで名前が出たのが増田だ。」


「まさか… 」



望月は呆然とした顔をしている。

そんな事は思っても見なかった。

あいつは何か危ない気配もあったが、
おとなしい性格だから強く見せたい、と、

俺たちの仲間になっている振りをしている、
と思い込む事にしていた。


望月にはショックな事だった。

この東条が二年生に調べさせた、
ということも信じがたい事だが… 


半信半疑な気持で京介を見ている。