天使と野獣


「望月、お前達、チーズを扱っているのか。」



倒れていた子分達も、全員が体を起こしてその場に座り込んだ頃、
京介は望月と向かい合った。



「チーズ… ああ、あれか。
俺はこう見えてもテキ屋の息子だ。

ああいう代物には手を出すな、
と親父から言われている。
こいつらだって同じだ。」


「何だ、お前、ヤクザの息子か。」


「ヤクザと言ってもテキ屋はその辺の暴力団とは違う。

まあ、最近は大変なようだが… 
それでもヤクには手出しはしねえ。

俺たちだって同じだ。なあ。」



と、望月は回りに座り込んでいる子分達に声をかけた。


だからと言って、
高校生が集団で恐喝まがいの事をすれば、
明らかに犯罪だが、

違法ドラッグの類に手を出さないという事が、
自慢のように強調した。

今の京介も他の事には興味は無い。

そして、こいつらはチーズに関しては蚊帳の外だ、と感じた。



「増田はどうだ。あいつ、
何故お前たちの仲間にいたかったのだ。」



その京介の問いに、
誰も思いつかないという顔をしている。

そんな事を考えた事は無かった。

増田は自分たちの仲間だと思われることが嬉しかった。

だから小遣いまでくれていた。

それぐらいに思っていたから、訳など分らない。


それで京介は自分の推測を話すことにした。



「俺は増田が校内でチーズを捌いていたとみている。
そんな素振りは感じなかったか。」


「何だと… 増田が。何か証拠でもあるのか。」



望月も仲間達も
京介の言葉は寝耳に水、

見事に驚いている。